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本を、旅を、世の中をどのように見るのか


by qzr02421
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規格外の衝動とは?

唐沢寿明はどんなときでも「一切否定的なことは言わない、人のせいにせず、悪くも言わない、まして落ち込まず、弱みもみせない」人物と香川照之が書いている。リハーサルの時には完璧にセリフを入れている。「ここ一番の集中力が高い」のは松島奈々子とも書いている。その集中力で「感情の分厚さ」を見せ付けるのだそうだ。唐沢はすべてのパワーを常に全開にし、松島は集中で乗り切るという違いがある。

山崎務は『俳優ノート』に「演技を練り上げる材料は全て日常にある」だから「劇を自分自身の問題として追求すること」すなわち「何のために演技するのか」、「統一した人格を役に与えないこと」「謎は謎のまま」そして「身に付けた技術は捨てる」そうして俳優の中に灯った何某かが「自分の内にあれば伝わる」と記している。香川は「人から借りた言葉を通じて、自分の本音を言いたい」と願っていると書いている。また山崎は「与えられた役割を全うするように努力することが積極的に生きること」だとも記している。

「ダメだしして役者がそこから抜け出そうとしている姿こそ素晴らしい」と書いているのは若松節朗監督だ。俳優はプレッシャーを与えられてこそやっと自分の中の真の獅子が起きる」と香川が言っている。セリフの字面に沿ったを規格内の解釈をする長澤まさみと森本未来に、理由を説明せず、演技を繰り返させることにより「規格外の衝動」が想起してくるのを我慢して待つのが監督の相米慎二だ。ダメだしも理由が必要な時と必要がないときがあるということか。

セリフを覚えるということは言葉の支配を受けるということだ。セリフを完璧に入れたからといって、秀逸な演技となるわけではない。セリフを完璧に入れたからこそ、自由な感情の奔出に支障をきたすことも多い。セリフを入れることとは二次的な机上の作業で、芝居をすることは多元的な要因が作用するブラックボックス的な作業だ。記憶と感情は相反するものでもある。セリフをセリフでないように自然に喋ることが俳優の永遠の理想だ。セリフを発するとき、感情を理性は6対4くらいが最高だ。これができるのが松島奈々子である、香川照之は2対8だと『日本魅緑』(香川照之著、キネマ旬報社刊)で書いている。
by qzr02421 | 2010-03-28 19:18 |