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本を、旅を、世の中をどのように見るのか


by qzr02421
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地球が食われる音はどのように作るのか?

舞台や映画での音を作るということは、難しいことだ。効果音はCDで発売されているが、この場面に本当に合った音というのは、そんなに簡単にあるわけではない。演出家が「しんしんと雪が降っている音」というのを要求したらどうする。雪には音がないのだ。

そのような要求に答えた人物がいるのだ。本当にいるのだ。木村哲人だ。彼が、自分の音作りの体験を本にしている。『キムラ式音の作り方』だ。筑摩書房で出版されている。彼はいろいろな音を作っている。「骨のなる音」を要求された。どうすればよい?

本当の音は使えないというのが原則だ。本当の骨がなる音は、骨がなるように聞こえないというのだ。本当の雨が降る音は雨の音に聞こえない。風が吹く音も同じだ。映画やテレビの画面を見て、それらしく感じる音というものがあるというのだ。

結局、骨の鳴る音は、「キャベツを包んだセロリを回すようにひねるする」と、「ベキリ」と希望通りの音になるというのは落ちだ、あるいは音だ。この音を発見するまでの苦労を考えたら、気の遠くなる努力だと思う。

「地球が食われる音」「宇宙人があいさつする音」「ネズミが死体をかじる音」など要求された音を作っていくのが木村さんだ。「蚊がブーンと飛んでいる音」というのも難しいそうだ。

ブーンという音、夜聞いたことがあるが、それを再現するというのは難しいことなのだろう。要求する人の希望、その人のイメージを再現するということ、さらに、その映像を見た人が、その音が、その通りの聞くことができるということ、深い話の本だった。

演劇の場合では、舞台では見えない音というのも、真剣に追求することが必要と説いている。舞台で見えないところの戸を開ければ、外の音は大きくなるというのだ。音がないような舞台はないともいう。無音の世界は本来はない。無音だとすれば、それは作り物だという。

まさにそのとおりだ。その音というものを注意して映画や、舞台を見れば、音響の人の苦労が分かるというのだ。案外、演出かも俳優もたいしたことはなく、音響が舞台の中心だということかもしれない。音響は奥が深いということが分かる本だった。
 
by qzr02421 | 2008-06-18 21:33 |