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本を、旅を、世の中をどのように見るのか


by qzr02421
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世間体を気にする生き方

井上ひさしがなくなった。その追悼公演というわけではないようだが、愛知県芸術劇場小ホールで「頭痛肩こり樋口一葉」を見た。劇団紙ふうせんの第12回公演だった。夏子つまり一葉は「世間とは因縁の糸でできた大きな網。そんな世間に大人しくおさまってやるものか」というつもりで生きたということらしい。夏子が小説家になり、本が売れて、早世するまでの何年かをえがいた劇だ。

花蛍という幽霊と夏子の関係で話がすすんでいく。夏子が死にたいという気持ちを抱いたため花蛍という幽霊を見ることができたのだ。花蛍は何か、世間に対して恨みがあるのだが、その恨みが何か覚えていないというのだ。その恨みを探りながら、劇は進行する。また、樋口家の貧困も描かれる。明治の初めの様子もよく分かる。

女性の生き方も問題になる。世間体を気にする生き方を強いられる女性像、その女性像を崩そうとする人、その女性像を守ろうとする人などの会話が楽しい。世間様に陰口を叩かれないように行きなさいという夏子の母は、当時も現在も母親の一般的な姿だろう。その常識の反発するのが子どもというのもよくある話だ。

夏子の妹の邦子が元気がよく、現実をそのまま受け入れて生きようとする姿勢に好感がもてる。夏子のように悩むのもよいが、現実をそのまま受け入れる生き方もありだろう。行き方の好みの問題だと思う。どっちがよいか悪いかという問題ではない。登場人物が女性6人という芝居だ。男は出てこない。女性の生き方の話には違いがない。その生きたかと考える一つの灯火ともいれる作品だと思う。どのような生き方をしていも、人生にはちがいがないのだし、その人生は一回きりしかないことも事実だ。自分で納得ができれば、それでよいのだろうと思う。あるいは納得するしかないということかもしれない。
by qzr02421 | 2010-06-29 20:27 | 劇,映画その他